かぜに効く薬はない

「かぜに効くくすりはない」

最近はいろいろなところで書かれているので知っている人も多いとは思いますが、かぜはウイルス感染症なので、特効薬はありません。(インフルエンザは別です。)

にも関わらず、かぜの薬をくださいという患者さんは後を絶ちません。医者の出す薬をきちんと飲めば治る、飲まないと治らないと信じている患者さんが大変多い。実際のところは、医者が処方できる薬は一時的に熱を下げたり喉の痛みを和らげるくすり、咳止め(あまり効かない)、痰を切る薬(これまた、あまり効かない)くらいです。市販薬と同じです。

できれば薬を飲まないで、十分休息をとり、水分と栄養をとって、熱いお風呂に入ってすぐ寝るのが、かぜを治す一番の方法です。よほど高い熱で辛くて辛くて、というのでない限り熱は下げないほうが治りは早い。ウイルスは熱に弱いし、熱が上がるのと同時にリンパ球などの免疫力が働いてウイルスを攻撃してくれるからです。咳も、ウイルスを喀出してくれるものなので、やたらには止めないほうはいい。

じゃあ、私自身はかぜぐすりを飲まないかというと、つらい症状があるのに仕事をしなければいけないときは、やっぱりかぜ薬を飲んで、だましだまし仕事をします。(もちろん、患者さんにかぜをうつすことが無いように最大限の注意を払います。)薬に頼らず、暑い風呂に入って早く寝る方が治りが早く、逆に薬で症状を抑えつつだましだましやったときは、ずるずるとなかなか治らないということは経験上もわかってはいるのですが、社会人としては、後者を選ばなければならないことも多く、つらいところです。

患者さんに薬は処方するのか、と言われれば、大体は希望のお薬を処方します。時間に余裕があるときは、上記のような説明を加えたうえで処方箋を渡しますが、たいていの場合は時間がないので、そのまま処方だけしてしまいます。

かぜ薬とはそういうものだと、思ってください。

 

ただ、単なるかぜだと思っていたら、肺炎や、免疫力が落ちるような別の重大な病気が隠れていた、ということもあるので、高熱が3日も続くとか、咳が1週間も続くとか、いつものかぜとはちょっと違うなというときは、やっぱり医療機関を受診して、検査をしてもらうことが必要です。